国立大学病院の赤字と研修医の不足

卒業生がそのまま出身大学の医局に進んでいた従来の研修制度は2004年に大きく変わりました。新医師臨床研制度では出身大学以外の病院も選べるようになったため、研修医は都市部の大病院に集中することになりました。

魅力ある病院をいかにアピールするか

それまで地方の国立大学病院は医局から関連病院や中小病院に医師を派遣しましたが、研修医の減少によって、派遣した医師を引き上げる事態が相次いでいます。その結果、医師数を確保できなくなった地域の病院では閉鎖、診療科の統合・休診などが起きていますが、それでも大学病院には医師を引き上げてなければならない理由があるのです。

それは国立大学の独立行政法人化が行われたためです。大学の法人化によって、大学病院はそれまで受け取っていた運営交付金が毎年1%ずつ減らされることになり、くわえて病院の収入に応じて毎年2%ずつ減らされるというダブルパンチに見舞われたのです。減少した収入を補うためには、人件費を抑えつつ、患者の平均在院日数を短縮し、新規の入院患者や外来患者の数を増やすしかないのです。

しかし、運営交付金の削減により、国立大学病院のうち約1/3が赤字に転落することになりました。財政基盤が揺らいでいる大学病院では十分な研究費が確保できませんし、高度な医療を提供するための最新の機器も買えないないことになります。

こうなると研修医はその大学病院に魅力を感じなくなり、ますます医師離れが進むという悪循環になりかねません。同じ国立大学病院でも、高度な先端医療に対応できる病院として最新の機器と指導体制、豊富な症例が経験できる特定機能病院は依然として研修先として高い人気を誇っています。

経営難に陥った自治体病院の赤字状態を改善するため、民間企業の資金や経営ノウハウを元に公的施設の建設や運営を効率的に行うことを目的としたイギリス生まれのPFI方式が注目されたことがあります。国内で自治体病院として初めてPFI方式を導入したのは高知医療センターでしたが、運営に行き詰まり、PFI契約が2009年度末で打ち切られることになりました。

効率経営のはずが大赤字を生み開始からわずか5年で破綻となりましたが、既に開院2年目の時点で資金ショートという破綻の兆候は見られていました。当時から問題になっていたのは、医業収益に対する医療材料費比率をめぐる数値目標でした。この数値を「約束」と見なすか「単なる目安」とするかで自治体とオリックスを中心とした民間企業が対立したのです。

血管内治療:「血栓溶解療法」と「Merci リトリーバー」

アテローム血栓性脳梗塞心原性脳塞栓症による脳主幹動脈閉塞とその部位が諸検査で明らかなものの、rt-PA療法の適応基準を満たしていないため実施ができないケースも想定されます。これらの例に対して、慎重な判断の上で血管内治療手技を用いたマイクロカテーテルを誘導し、ウロキナーゼを投与して血栓の溶解を図ります。

しかし、治療による閉塞血管の再開通は劇的な症状改善をもたらす可能性がある一方で、致死的な出血性梗塞を誘発するリスクもあります。たとえ麻痺が残っても、生命予後が良好な患者に血栓溶解療法で知識的出血を招くことは絶対に避けなければならず、適応の決定は慎重に行わなければなりません。

出血性梗塞の発生を予測することは用意ではありませんが、少なくともCTで何らかの不可逆的虚血性変化が認められる場合や、緊急MRI検査の拡散強調画像で広範な高信号域を呈する場合は、血栓溶解療法は出血の危険が高く禁忌と考えられています。

2010年には脳幹動脈内の血栓を機械的に捉えて回収する血管内治療システム「Merci リトリーバー」が認可されました。血栓溶解薬を使用せず出血リスクが低いため、発症経過時間の枠をより拡大することが可能と推定され、期待が寄せられています。

脳血管障害の病態・疫学

脳表面のクモ膜下腔にある動脈の壁が、引き伸ばされて膨らむことによってできた血管の瘤のことを「脳動脈瘤」といい、クモ膜下出血の大半はこの脳動脈瘤が破裂することによって引き起こされます。

能動脈はその形状から、①嚢状、②紡錐状、③解離性という3つのタイプに分類され、その成因から、先天性、動脈硬化性、細菌性、真菌性、外傷性などに分類されます。これらのうち、嚢状動脈瘤が全体の7~9割を占め、臨床上最もよく見かけます。

嚢状動脈瘤は脳底部のクモ膜下腔を走行する主要脳血管の分岐部に発生するので、これが破裂すると脳底部から脳表に至るクモ膜下出血を起こすことになります。破裂動脈瘤の好発部位は前交通動脈、内頚動脈-後交通動脈分岐部、中大能動脈分岐部となっています。

嚢状動脈瘤の成因は現在のところ確定していませんが、新生児に見られることは稀なため、純粋に先天性であるとは言えず、先天的な脳血管壁の脆弱性に高血圧などの後天的な血管障害因子が加わって形成されるとされています。

脳動脈瘤の発生頻度としては、部検例、また脳ドック受診者の数%程度で発見され、決して珍しい疾患ではありません。脳動脈瘤は列によるクモ膜下出血の頻度は、日本では欧米よりも高く、人口10万人に対して10~20人であり、好発年齢は40~60歳代となっています。

全国の脳卒中の患者数はピークを迎える2020年には280万人に達すると予測され、その約60%は介護を要するされていることから、この傾向は今後も続くことでしょう。

脳動脈瘤が破裂する確率は、年間0.05~3%と、報告により異なりますが、およそ年間1%前後と考えられおり、一般に大きいもの、小さくても形が歪なものは破裂しやすいとされています。破裂によるクモ膜下出血の予後は不良とされ、70%の患者が死亡するか障害を残し、社会復帰率は20~30%と考えられています。高次脳機能を含め、完全にもとの社会や職業に戻る率は、さらに低くなります。